2003年から 約20年間 我が家の冬を暖めてくれた薪ストーブを買い換えました。
11月の後半から3月の4か月間 我が家の暖房は薪ストーブだけに頼ることにしています、1階のリビングの隅っこにある薪ストーブで 2階の子供部屋から ロフトもすべて暖かくしてもらえます、オールドアメリカンスタイルで 20年という長い付き合いなので すごく愛着がありましたが ここ数年少しずつ 不具合が起きることもあり 大規模なメンテナンスが必要になり ならばと 買い換えることにしました。
初めて 薪ストーブに出会ったのは 今から40年ほど前になります、信州に暮らす友人が 薪ストーブを使っていて 建物全体がふわっとした暖かさに包まれている とてもいい感じに 驚きました、今思うと それから20年後 新築を機会に 我が家の暖房を薪ストーブに決めたのは その時の出会いがあったからだと思います。あまり褒めてくれないうちのカミさんが 我が家の暖房に薪ストーブを選んだことは本当に良かったと褒めてくれています。
20年前の薪ストーブ事情は とてもシンプルで 薪ストーブ屋さんで 簡単なレクチャーを受けて、当時決められていた 薪ストーブ協会のような団体の定めたルールに従って 火災など起こさないように 自分で設置 使用開始 という感じでした。
そんな経験もあり 今回も 薪ストーブ屋さんに 買いに行ったのですが 20年という年月で 薪ストーブ事情が 驚くほど変わっていました。
冷静に考えれば 我が家にとっては 冬の当り前で ずっと古い物を使い続けていたのですが 携帯はスマホ 車もエンジンからモーター CDなんて見かけないし 当時小学生の娘も 結婚しちゃうのですから 薪ストーブ事情だけは そのまんま なんてことはないですね。
春が来た
桜の開花予想が聞こえてくる頃に 我が家の薪ストーブの季節が終わります。
11月から3月 木々から葉が落ちて 桜が咲く頃が 我が家(関東地方)の薪ストーブの平均使用期間であり 同時に来シーズン用の薪集めシーズンでもあります、勿論 灯油や電気の様に 薪を買うことも簡単ですが 電気や灯油に比べて 高価です、コップ1杯の灯油で得られる 暖かさを 薪で得ようと思うと 一束ではとても足りません、そこで我が家では薪を ほぼ無料で手に入れるいくつかの方法を 考えて20年実践して来ました
簡単ではありませんが 努力と 保管スペースさえあれば 出来るものです
そもそも 薪ストーブとは 暖房器具の一つで、エアコンにするか ファンヒーターにするか 石油ストーブにするか コタツにするか それとも 思い切って セントラルヒーティングにしてしまおうかと 暖房を考えるときの 選択肢のひとつです。
日本の様に 四季のある所では その土地の気候に合わせて 冷暖どちらに重点を置くか考えてなくてはなりません その上経済的な部分、器具の設置費用よりも 運用に必要な燃料代 メンテナンス代がその後の生活の大きな負担にならないようにも考え、そのうえ 最近は エコとか持続可能性とか 実にもやっとした基準まで考慮の一つに加えなければならないようです。
欧米の 薪ストーブ事情
我が家が選択した薪ストーブは DOVREという ベルギーのメーカー(創業はノルウェー)の薪ストーブです 今までの薪ストーブは アメリカ製 バーモントキャスティング社の薪ストーブでした。
欧米では 普及率の高い暖房器具なので 薪ストーブを使用するための 法律で定められたいくつかのルールがあります 特に煙に関しては とても厳しい基準があり アメリカのメーカーは フィルターを取り付けて煙の排出量を減らす方法を選択するメーカーが多いようです 欧州のメーカーは 煙を再燃焼して 排出量を減らす方法を選択するメーカーが多いようです、数年ごとに フィルターの掃除や交換が必要になるは 大変なので燃焼方法で 煙の排出を減らす方式の 薪ストーブを選びました。
さて 最近の 欧米での 薪ストーブ事情は どうなっているのでしょうか 実は 薪ストーブを選んでいる時も 当時聞いたこともないようなメーカーが沢山あって 既に薪ストーブ界隈の 浦島太郎状態になっていました。
欧州は とても環境問題に厳しい そんなイメージがあります 何しろ歴史のある自動車メーカーが 環境の為とはいえ 産業革命のころから 培ってきた 内燃機関をすべて捨てて EV車にする 選択をするくらいですから。
では 欧米の 近頃の薪ストーブ事情です 出来れば 信頼できる数字で実情を知りたかったのですが 残念ながら 日本語では見つけられないので 申し訳ありませんが 薪ストーブ関係の ニュース、日本の薪ストーブ専門店の資料、日本暖炉ストーブ協会などが発表している資料から気になる トピックスを 拾ってみましたので 紹介いたします。
(フランス)
大気汚染の原因のひとつにあげられる PM2.5の43% PM1.0では55%が薪ストーブの煙によるものと調査報告されていて それらの汚染物質に起因する死者数は4万人とフランス公衆衛生庁が発表しています 木質燃料による大気汚染についての教育 啓発に力を入れて クリーンな暖房装置への買い替え促進制度の強化をしています。
(ドイツ)
1500万台の暖炉 薪ストーブが使用されていて 公害の原因ととらえられています
ドイツ連邦排出規制法により 薪ストーブの使用方法や設置が厳しく規制されています
煙突掃除人(職業として確立している)による メンテナンスおよび監査が行われていますが都市部から離れた地域では 履き古した靴 解体したクローゼットなどのゴミが燃やされているなどの報告が 多数あり これらのゴミの薬剤や塗料が燃やされることにより
ダイオキシンが発生して 大気や土壌を汚染しています。薪の水分が完全燃焼の妨げになるとして 含水率25%以上の薪を燃やすことが禁止されていますが 完全には守られていないのが 実情の様です。コペンハーゲンやアーヘンなどでは公害の原因を薪ストーブと定め 使用禁止 もしくは規制など 大気汚染防止プログラムを制定しました。
(イタリア)
イタリアの大気汚染は 欧州の中でも深刻な部類に入ると認識されているようです、中でもイタリアンピザの発祥の地とされ 薪を使用する薪ストーブ型の石窯(ピザ窯)が多いサン・ヴィタリアーノ市は大気汚染公害を低減するために 薪ストーブ型の石窯を使った伝統的なピザ製法に対する禁止令を出しています 利用を再開するためには フィルターの設置などの改善義務があり 違反した場合には 1000ドル程度の罰金もあるようです。
(デンマーク)
デンマークでは大気汚染により 毎年約4000人が早死にしているとして その大気汚染の汚染源のひとつに薪ストーブを挙げて「きれいな空気をデンマーク国民に」という大気汚染浄化政策を実施 旧式の薪ストーブ使用禁止とし 薪ストーブの廃棄を国民に呼びかけています。
(ノルウェー)
ノルウェー大気研究所によると ノルウェーでは二番目に普及している暖房器具が薪ストーブで 大気汚染の内 ほぼ全量が薪ストーブによる粒子状物質によるものとして PM2.5の年間排出量は800トン以上と言われている
(イギリス)
オックスフォードではエネルギー価格の高騰により 安価な薪を使う薪ストーブに切り替えが進み2022年度には 薪ストーブの販売台数が 前年比40%増になり 更なる大気汚染が進み PM2.5の発生原因の66%が 薪ストーブによるものであるなどの教育を推進している。
(アメリカ)
アメリカでは 州によって 多少の制度の違いがありますが アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)により 薪ストーブへの厳しい認証制度が設けられ 米国内の薪ストーブ販売には(EPA)の認証をクリアすることが義務付けられている。
カリフォルニア州 薪ストーブを使用してはいけない日 No Burn Day を制定 汚染のひどい日には 薪ストーブ禁止の 警報も発せられます。
日本の薪ストーブ事情
薪ストーブを唯一の暖房としている 我が家には とても 悲しい 欧米の薪ストーブ事情です 少し冷静に 日本の薪ストーブ事情を 我が家の経験も交えながら 考えてみたいと思います
映画などで 描かれる 欧米の街並みや家族のだんらん風景などを見ると 必ずと言っていいほど 暖炉が写っています 屋根上のアクションには 無数に並ぶ煙突があります
普及率が 日本より ものすごく高いことが伺えます 日本では コタツですね 2017年環境省の統計では33%の普及率だそうです 冬といえば コタツシーンです 勿論演出だったりデフォルメもあるのでしょうけど もしも冬に同じアクションシーンを屋根上で撮影したら煙で何も見えないと想像が出来ます 我が家も焚き始めは申し訳ございません 煙が出ます ドイツの様に 薪ではないもの(ゴミ)なんて燃やしたら 臭いも大変です 我が家の煙は ご近所からこの匂いで冬を感じると 言ってもらえているので 迷惑にならないようにクリーンバーン(高温完全燃焼)を心がけて薪ストーブの温度管理に気を付けています。
日本では 地球温暖化対策の名目で 薪ストーブを推進する姿勢を見せています
地方自治体も追随して 環境省 農水省 林野庁などが連携して 木質燃料を使用する暖房器具の(薪ストーブなど)購入に補助金などの制度もあるようです
欧米で悪者の薪ストーブが 日本では 例のエコです 環境にやさしいとされているのは なんだか不思議です と言うより首をかしげます。
イタリアでは 伝統的なピザ窯ですら PM2.5の発生源として 使用禁止です 日本だったら ウナギのかば焼き 焼き鳥など炭火で焼くとPM2.5とかダイオキシンをまぶして食べているということでしょうか すごく体に悪くて 明日にも発癌してしまいそうですが そのての注意喚起はなされていません。
日本は 欧米の様に 薪ストーブの煙が町中に広がり 健康被害を起こすような 高い普及率になることはないと思います 暖房器具の選択肢の中で 薪ストーブの普及率は1%に満たないようです 燃料が高価であること 燃料の流通があまり発達していないこと 何より 日本と欧米の暖房の使い方が 日本は省力化に重点を置いた 個別に部屋を暖めるスタイルで 欧米は家全体を暖めるというスタイルが主流だということのようです
誰もいない部屋は寒くても構わない 何よりエネルギーの無駄と 日本人は考えます コタツなど部屋すら暖めなくても 快適な冬を過ごせるのですから(コタツは日本にしか無い暖房器具です そもそも土足では無理です)省エネの極みエコです。
欧米の薪ストーブの事情を調べていると 日本の 公害 という言葉を思い出しました 年齢が50歳以上の方は 小学校 中学校の時に 掃除当番で ゴミ焼却炉に集めたクラスのゴミを持って行ったこと 経験をしているのではないでしょうか 田舎の家にも 生ゴミの穴と 簡単なゴミ焼却施設があったこと覚えているのではないでしょうか 夕方になると 学校や住宅で 煙が上がっていたのです(冬に限らずです)。
地方自治体により 多少の差はありましたが 平成13年頃から個人のゴミ焼却による近隣への迷惑 ダイオキシンによる健康被害を考慮して原則禁止 平成16年頃から 罰金付きの 違法となりました 今では日本中で 家庭から学校から煙が上がるのを見ることはありません 今の欧米の薪ストーブ事情と 重なって見えます。
エコ(よりよい環境を作るため)で薪ストーブを 禁止もしくは厳しい規制をする欧米
エコ(よりよい環境を作るため)で薪ストーブを 推進する日本
世界が 一つになり 同じ方法で 地球環境を良くしていくことの難しさを感じます 国ごとの 文化や考え方のちがいがあること実感しました。
欧米の薪ストーブ事情 調べていると 日本のテクノロジーだと思いますが 欧米でエコキュートが とても人気だという ニュースをよく目にしました 特にEUでは 省エネを理由に エコキュート導入に補助制度などもある国もあるようです。残念ですが 日本の薪ストーブメーカーは 長い歴史で培われたノウハウを持つ欧米のストーブメーカーにはかないません 日本は欧米から薪ストーブをたくさん買って エコキュート どんどん輸出する とても良い感じです。
欧米で 薪ストーブを暖房器具として選ぶ理由の1位は おじいちゃんの家にも お父さんの家にも薪ストーブがあったからだそうです 裏返せば薪ストーブを知らない人は選ばないけど 知ってしまうと薪ストーブの暖かさの魅力に取りつかれてしまうのではないかそして 欧米では30%近い人が その魅力を知っているのだと思います。
「薪ストーブは3度人を暖める」と言われます 名言でもないので 誰が言い出したのかはわかりませんが 大体の意味は 薪割で汗をかいて その火で暖まって 料理で訪れる友人を家族を暖めるということだそうです 上手に使って 薪ストーブを 環境に悪いものにならないようにしようと 思いました。
株式会社メタックス 田淵杉穂